ROE(株主資本利益率)とは?経営者が知っておくべき、ROEの正しい見方と高め方

知のライブラリ

「ROE(アールオーイー)」という言葉を、投資家や金融機関との対話で耳にする機会が増えていませんか?

ROEは、企業の成長性や収益性を測る上で、国際的にも重要視されている指標です日本取引所グループ「ROEとは」)。しかし、「計算式は知っているけれど、自社の経営にどう活かせばいいか分からない…」と感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ROEの基本から、なぜ経営者がこの指標に注目すべきなのか、そしてROEを経営改善にどう繋げていくかを、わかりやすく解説します。

ROE(株主資本利益率)とは?なぜ経営者が注目すべきか

ROE(Return On Equity)とは、「株主が投じたお金(資本)を使って、どれだけ効率的に利益を上げているか」を示す指標です。

簡単にいうと、株主から預かった資金を、経営者がどれだけ上手に増やせているかということです。ROEが高いほど、株主にとって魅力的な企業であると言えます。

  • 投資家にとってのREO:投資判断の重要な目安
  • 金融機関にとってのREO:融資の審査基準の一つ
  • 経営者にとってのREO:自社の収益性や経営効率を客観的に把握するための羅針盤

つまりROEは、単なる数字ではありません。企業が株主や市場からどう評価されているかを知るための、重要なコミュニケーションツールです。これは、融資を受ける際の審査基準にもなります。

【図解】ROEの計算式と分解:どこに問題があるかが見えてくる

ROEは、以下の簡単な式で計算できます。ROE=株主資本当期純利益​×100(%)

このROEをさらに深く分析する手法が、「デュポン分析」です。ROEを3つの要素に分解することで、どこに経営課題があるのかを明確にできます日本取引所グループ・用語集

ROE=売上高利益率×総資産回転率×財務レバレッジ

1. 売上高利益率 = (当期純利益 ÷ 売上高)
本業でどれだけ効率よく利益を出しているか(収益性)を示します。
→ ここが低い場合は、コスト削減や付加価値の向上を検討する。

2. 総資産回転率 = (売上高 ÷ 総資産)
会社の資産をどれだけ効率よく売上に繋げているか(効率性)を示します。
→ ここが低い場合は、在庫の削減や遊休資産の活用を検討する。

3. 財務レバレッジ = (総資産 ÷ 株主資本)
株主資本に対する借入金の割合、つまりどれだけ他人資本(負債)を活用しているか(安全性)を示します。
→ ここを適正に保つことで、収益を拡大できる一方、リスクも高まる。

このように、ROEを分解して分析することで、単にROEの良し悪しだけでなく、「なぜROEが低いのか?」という原因を特定し、具体的な改善策を立てることができます。

ROEの目安は?日本の平均と海外企業との比較

ROEの良し悪しは、業種や市場環境によって異なりますが、一般的には8%以上が一つの目安とされていますQUICK資本市場研究所

  • 日本企業平均: 約6〜8%
  • 海外の優良企業: 15%を超えるケースも珍しくありません。

日本企業のROEが海外に比べて低いと言われる背景には、過剰な内部留保や負債への過度な慎重姿勢などが指摘されています。

自社のROEを同業他社や市場平均と比較することで、自社の経営が業界内でどのような位置にあるのかを客観的に把握できるでしょう。

ROEを高めるための3つの改善策:実践的な経営戦略

デュポン分析で明らかになった課題を元に、ROEを高めるための具体的な経営戦略を3つご紹介します。

1. 収益性を高める(売上高利益率の改善)

  • 高付加価値商品の開発: 新しい技術やサービスで、商品の単価を上げる。
  • コスト削減: 無駄な経費を見直し、業務効率を改善する。
  • 適正な価格設定: 利益率を確保できる価格設定に見直す。

2. 効率性を高める(総資産回転率の改善)

  • 在庫の最適化: 売れない在庫を減らし、キャッシュフローを改善する。
  • 遊休資産の売却・活用: 使用していない土地や設備を売却したり、有効活用したりする。
  • 売掛金の早期回収: 支払いサイトを短縮し、資金の回転を速める。

3. 財務構造を最適化する(財務レバレッジの改善)

  • 負債の活用: 無借金経営にこだわりすぎず、適度な借入金で事業を拡大する。
  • 株主還元: 配当や自社株買いを行い、株主資本を圧縮する。

重要なのは、この3つの要素のバランスです。たとえば、負債を増やしてROEを高めても、経営リスクが増大する可能性があります。自社の事業特性や経営目標に合わせて、最適なバランスを見つけることが重要です。

まとめ:ROEを経営の羅針盤に。企業価値を高めるために

ROEは、単なる企業の収益性を示す数字ではありません。それは、自社の経営が株主や市場からどう評価されているかを知るための、重要な経営の羅針盤です。

デュポン分析を活用してROEを分解することで、自社の強みや弱みを客観的に把握し、収益性、効率性、財務構造の観点から具体的な改善策を立てることができます。

ROEを正しく理解し、自社の経営に活かしていくことが、これからの企業価値を高め、持続的な成長を実現するための鍵となるでしょう。

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